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公開査定会@としまアートステーション「Z」
日時:6月7日 13:00〜
査定した本:標準ドイツ語改訂版・郁文堂 / よくわかる微分積分 / ナウカ出版のロシア語の教科書
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東京蚤の市で余白書店ブースに立ち寄って下さった方が三冊、手垢本を持ってきてくれました。
一冊は、暗記し終えるとそのページを破ってしまったというドイツ語の教科書です。表紙と数枚のページ(目次とか)しかないその本。かろうじて残っているページには、読み始めた日付や当時流行していたアニメの一節の書き込みがありました。明らかに本ではないはずなのに、その方にとっては本。学生時代に使っていた本ですから、軽く10年近く経っています。大切にされていたんですね。査定会後も大事に持ち帰られました。
その方は他にも二冊教科書を持ってきてくださいました。微分積分の本とロシア語の本です。記憶に強く残っているのはロシア語の教科書。設問も説明も例文も全てロシア語で書かれていました。書き込みは、随所にある「やれ」「読め」「何度もやれ」という命令、「バカ」とセリフのあるイラスト。査定しがいのある本でしたね。聞くとロシア語はとても難しい授業だったらしく、年度のはじめに40名近くいた学生もテスト前になると8名ほどしか残らなかったそうです。宿題箇所を示すメモ書きが命令口調なのは、その厳しさが書き込みにあらわれてしまったのか、もしくはその方が自分に対して厳しいからそうなったのかわかりませんが…おそらく両方でしょうね。
今まで査定した手垢本は誰が書き込みをしたのかわからない状態のものばかりでした。書き込みや染みや折りから推理し、その人や物語を想像する査定が私(ヨネザワ)のスタイルです。今回は本人が目の前にいる状態。推理ではなく、取材で物語を具体的にしていく査定は初めてでした。本を通じて、その方の(今回は)言語や学びに対する態度などを知ることができました。本に現れる読み手の態度を考えると、これからの査定(推理?)も面白くなりそうです。
以上です。
書き手:ヨネザワエリカ